川遊びに興じて、少し時間をとられたが、なーに、時間はいくらでもあるさ。
のんびり行くべ、などと思いつつ車を走らせる。風景はカーブを曲がる度に
変化して飽きさせない。木々が生い茂った道を通り抜けると草原が広がって
いたり、急に断崖のような所が現れたり、車を走らせていても実に面白い。
カーブの手前で、ゲート注意の黄色い看板が出ているところがあった。何の
ことだろうとカーブを曲がってみると、ゲートがあった。“ノードッグス”と書い
てあり、手動で開け閉めするようになっている。車から降りてゲートを開けに
行くと反対側からも車が1台やってきた。先にゲートを通って対向車が行った
後でゲートを閉めようと思い、車を降りようとしたら、対向車のドライバーが、
「ゲートは閉めとくよ」と言ってくれたので、任せることにする。ご機嫌な道は、
まだまだ続く。途中、橋の架かっていない川を浅瀬を選んで渡ったり、(かな
りドキドキした)長い下り坂からカーブに突入するときにはタイヤがとられない
か心配だったし、カーブで対向車が来たら接触する可能性もあるし、気分はラ
リードライバーといったところか。(そんなにスピードは出してないです、念のた
め)そんなご機嫌なドライブを楽しんで、最初は2時間くらいで着くかと思って
たんだけど、未舗装道路に、途中、道草もしてたので、着いたら2時半近くに
なっていた。






コロコロとその表情を変えていく景色
約4時間くらいかかってしまった。コルヴィル岬のポートジャクソンという所がキ
ャンプ場になっていて、そこに車を入れる。午後の陽射しは、晩夏といえどもか
なり強い。風が気持ちよく吹き抜けていくので、あまり気にならないがサイパン
での教訓を活かし、日焼けには充分気をつける。ポートジャクソンはとても綺麗
なところで、ビーチがずーっと遠くまで続いている。海の色も空の色よりも淡い水
色のマリンブルー。もう晩夏なのでキャンプ場に遊びに来ている人の姿もまばら。
さぞかしシーズンは人で賑わうんだろうなあ。それが、今は数人の人がいるだけ。
こんな天気のいい日は、水はもう冷たくて海に入るのは躊躇われるが、日光浴
するだけでも気持ちがいい。人影も少ないここが気に入ったので、かねてから考
えていたことを実行することにする。
今日はここで野宿しよう!
ニュージーに来て、まだ星空を見ていない。そんな欲求からどうせ星空を見るんだ
ったら、人工の光のないところで見たいと思って、ここが気に入ったら野宿してやろ
うと思っていたのであった。ただボーっと海を見てるだけでも飽きない人間だから問
題ないだろう。コロマンデルで買ってきたキッシュとビールでちょっと遅めの昼食をと
り、のんびりした風景を見ながらボーっとしている。のんびりと流れていく時間の中で
ウトウトと微睡みの中に沈んでいく。気が付くと夜の7時になっていた。といってもま
だ陽は高い。が、昼間は日光浴を楽しんでた人がぱらぱら見えていたが、気が付け
ば他に誰もいなくなっていた。買ってきたバナナとお菓子を食べる。
周りに人がいなくなり、陽もだいぶん西に傾いてきた。夜8時を回り、西の空が赤く
燃え上がりだした。夕焼けとはよく言ったもんだ。西の空が赤く燃え上がり、陽が西
に落ちていくと、夜の訪れが近いことを告げるかのように、東の空が藍色に染まりは
じめる。今夜は天気はいいだろうか。
ドキドキしながら夜の帳が降りるのを心待ちに焦がれる。西の空に夕焼けの残照が
残り、空がほとんど藍色に染め上げられた頃、風も出だして、肌寒くなってきた。風は
海の方から吹いてくる。日が暮れてくるに従って、風も強くなってきた。外は天然の冷
蔵庫のようになってきた。ビールを外に出しておく。夜9時近くになったら、辺りは真っ
暗になった。昼間はあんなに綺麗に見えた海も夜になると暗く、その中に何を内包して
いるのかが分からないくらいだ。そして夜になると波も心なしか大きくなってきたような
気がする。昼間の美しさとのギャップが激しいせいか、何でも飲み込んでしまいそうなそ
の姿がひときわ不気味に見える。車から外に出ると風が肌を切るような感じがする。

日本から持ってきたセーターを着て外に出る。ラッキーなことに今夜は月も出ていない。
空には満天の星空。これこれこれこれ。この星空を見たかったんだ。周りには人工の
明かりなんかは何もない。おまけに月までどこかに行ってしまった。南十字星も綺麗に
見ることができた。僕はこの南十字星と満天の星空を肴にビールを飲む。最高に気持
ちがいい。この満天の星空を独り占めにしてビールを飲む。最高の贅沢のような気が
する。この贅沢な気分を味わうためにここまでやってきたといっても良いだろう。今回の
旅行はこの星空を見れただけで来て良かったと思う。星々は刺すほどに冷たく澄み渡る
夜の大気の中、まるでほんとに降り出して来るんじゃないかと思えるほど、満天の星々が
迫ってくる感じがする。僕は刺すほどに冷たく吹き抜けていく風の中、どれだけの時間、
そこに立ちつくしていただろう。星々の瞬きを飽きることなく眺めて、贅沢な気分に浸り、
このまま星の輝きをずーっと眺めていたいと思いつつこの夜は車の中で眠る。
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